【和裁】ウールの反物から着物のホームウエア「上っ張り」を作りました

ハンドメイド

2019年のはじめに、家でウールの反物を水通ししました。
(→過去記事「ウール着物の反物を家で洗濯してみました」)

その反物から和裁教室で作ったのが、着物用のホームウエアである上っ張りです。

ウール地の上っ張り

1反の反物から、2枚の上っ張りを作りました。

1枚は義母用、もう1枚はわたし用です。

きっかけは先生が着ておられた上っ張り

わたしは「洗える着物」「ふだん着」というキーワードにどこまでも心惹かれてしまいます。

和裁教室で話題にしたとき、先生が勧めてくださったのがウールの反物でした。

ウールの反物



同じ頃、先生が時折着ておられた上っ張りに一目惚れしました。

先生のおばあ様の形見だそうで、紺地に規則的な柄が並んだポリエステルの生地で作られています。

着物の上から羽織れるということは、洋服の上からも楽に重ね着できます。


先生がふだん着のひとつとして着ておられるのがとても素敵、かつ、機能的で、わたしも作ってみたいとお願いしました。

先生がご快諾くださり、家でも洗えるウールの反物で、和洋どちらの衣服でも気軽に羽織れる上っ張りを作ることになりました。

和裁教室で格安で譲っていただいたウールの反物は着物1枚分の長さがありましたので(水通し後で10m30cm)、上っ張りを2枚作ることができました。

上っ張りができるまで

生地を裁断して縫い合わせるための印をつけるまではプロにお任せ

縫い始める前に、生地を裁断し、縫い合わせるための印をつける「ヘラ付け」という工程があります。

この裁断とヘラ付け、わたしの通う和裁教室ではプロの和裁士である先生に別料金をお支払いしてお任せします。

着る人の体格に合わせ、先生から生地を裁断していただきます。

どの部分にどのように柄が出るようにするか、また、生地の傷や色ムラが着たときに隠れる部分にくるよう、ベストな組み合わせを先生が考えてくださいます。

今回の上っ張りの反物は紺色の無地ですが、わずかな傷や色ムラがありました。


ひとつひとつの生地の柄や特性、できあがりのサイズを考慮して1本の反物をそれぞれのパーツに割り振るのは、素人には考えただけで気の遠くなる作業です。

仕上がりの美しさは、この裁断やヘラ付けに負う部分が多いのだろうということが、最近ようやく実感できるようになりました。

順番に縫い合わせていきます

上っ張りを作る中で先生から改めてご指導いただいたのは、「こまめに糸を流す」ことです。

これまでも、縫い糸がつったり、布地にシワが残ったりしないよう、糸こきはこまめにしていました。

でも、糸こきだけでは縫った後の凸凹が目立ってしまいます。

そこで、針の頭で布と布の間の縫い目をなぞるようにして 「糸を流す」のです。

こまめに糸を流すことが大切です

(写真ではわかりにくいかもしれませんが)糸を流した方が、布地と糸の間に余裕ができ、凸凹が目立たなくなります。

正絹の着物を縫うときには、こまめに糸を流しながら作業することで仕上がりのきれいさが違ってくるので、糸を流しながら縫うことを身に着けておくことが大切なのだそうです。


今回も、「運針」、「耳ぐけ」、「折りぐけ」、「本ぐけ」 という和裁の基本となる技術で縫いました。

耳ぐけ、折ぐけ、本ぐけ

和裁の基本的な縫い方については過去記事「【和裁の基本技3つ】着物じゃなくても役立ちます」をご参照ください。

①袖(そで)

上っ張りの袖

まず、両袖下を縫います。

今回の上っ張りの袖(そで)は「船底(ふなぞこ)」という形です。

カーブに添って2本ぐし縫いした糸を引き、ひだを寄せて袖を形作ります。

袖口を耳ぐけという縫い方で始末しますが、最後にゴムを入れられるよう縫い始めと縫い終わりは少しスペースを空けておきます。

②背中

上っ張りの背縫い

背中の中心となる部分を運針で縫い合わせ、縫い代を耳ぐけという縫い方で始末します。

③脇

上っ張りの脇縫いと裾の折ぐけ

左右の脇を運針で縫い合わせ、縫い代を折りぐけという縫い方で始末します。

裾(すそ)も折りぐけで始末します。

④衿(えり)

上っ張りの衿

布地のつり合いに注意しながら衿を運針で縫い合わせます。

衿の表側が厚くなるように衿先をたたみ、本ぐけという縫い方で包むように縫います。

⑤袖を付ける

上っ張りの袖付け

一番はじめに縫って休ませておいた袖を運針で縫い付け、縫い代を折りぐけで始末します。

⑥紐を作る

上っ張りの紐

本体と同じ反物から紐を4本作ります。

布地の裁断とヘラ付けを先生にお任せしているので、わたしが体験する工程のうち最も苦労するのがこの紐作りです。

筒状ではなく、細い袋状に縫ったものを表に返すのにとても時間がかかります。

1着目の上っ張りは紐を4本表に返すのに2時間半、2着目のときは紐4本で1時間かかりました。


表に返した紐は、内側にある縫い代を表から運針で縫い押さえます。

端を五角形になるように結んで対にしておきます。

⑦仕上げ

裏側から霧吹きしたあて布をしてアイロンをかけ、しわを伸ばしていきます。

裾(すそ)、脇、背、衿、袖付けと、順にしわを伸ばします。


紐を4か所に縫いつけたら、きれいに折りたたみます。

上っ張りに紐を縫いつけます



最後に、両袖口にゴムを通したらできあがりです。

上っ張りの仕上げ

家で洗えて暖かい上っ張り

先生に裁断とヘラ付けをしていただいたので、宿題を合わせて6回と少しのレッスンで上っ張りが完成しました。

できあがった上っ張りを着てみました

着物の上から着ると腕がとても動かしやすくなります。

洋服の上からでも着られるので便利です。

袖に余裕があるので、重ね着のときに脱ぎ着が楽です。

決して地厚な生地ではないのですが、とても暖かいです。

「ウール地の着物は暖かい」とよく聞きますが、上っ張りでこれだけ暖かいのなら、全身を包む着物(長着)であればさらに暖かいだろうなと思います。

本格的な冬が来る前に完成してよかったです。

家で洗えるので、心置きなく着倒すつもりです。



わたしは和裁教室で作らせていただきましたが、上っ張りはネット通販でも購入可能なようです。

機能的で暖かいので、寒い時期のホームウエアとしてもおすすめです。