「『びじゅチューン!』制作の舞台裏」受講レポート

びじゅチューン!

「『びじゅチューン!』制作の舞台裏」を受講してきました!

NHK文化センター開催の講座、 「~井上涼さんとプロデューサーが語る~『びじゅチューン!』制作の舞台裏」 に参加しました。

内容が小さな子ども向けではないが、それでも良ければ受講可能とのことだったので、わたし、夫、娘(小学生)の三人で受講しました。

とき・ところ

2018年11月3日(土・文化の日)13:30~15:00
NHK文化センター新潟教室で開講されました。


参加者は約100名でした。

わたしより年上(40歳代以降)かなと思われる落ち着いた年代の参加者さんも多く、 「びじゅチューン!は、幅広い年代の人に愛されてるんだな~。」と感じました。

講師

アーティスト・井上涼さんと、番組プロデューサー・倉森京子さんのお二人が講師でした。

井上涼さんは、びじゅチューン!の作詞・作曲・うた・アニメーションを作っておられます。


番組プロデューサー・倉森京子さんは、美術関連番組に携わってこられた方で、NHKの老舗美術番組「日曜美術館」(「日曜美術館」公式ホームページはこちら)や 、「テクネ 映像の教室」(「テクネ 映像の教室」公式ホームページはこちら)などを担当しておられます。


わたしは、倉森さんが「びじゅチューン! DVD BOOK」に書いておられる「プロデューサーのことば」の包み込むようにあたたかい感じが好きだったので、

「こういう文章を書かれるのは、どんな方なんだろう・・・?」と

お話を伺えるのを楽しみにしていました。

講座の流れと印象に残ったこと

びじゅチューン!作品が作られる過程

講座開催時点で、高村光太郎の「手」をモデルにした「指揮者が手」が 最新作でした。

この「指揮者が手」を例に、びじゅチューン!作品がどのように作られていくのか 説明がありました。


はじめに完成形の「指揮者が手」を井上さんが流したとき、機材の調子が悪く歌がよく聞こえなかったため、井上さんが生で歌って補足されました。

思わぬ形で生歌を聞けて、わたしも含め、会場からは「わぁ~」というため息まじりの歓声が上がっていました。



びじゅチューン!で題材とする美術作品は、偏りがないよう、

・日本の絵
・外国の絵
・立体作品

の3つをワンセットで作っていて、「教科書にのるような有名な作品」を基準に選ばれます。


選ばれた美術作品をもとに、井上さんが企画書(「びじゅチューン!DVD BOOK」にも載っています)を作ります。

模写などを通して井上さんが美術作品に持ったイメージを、

「日常で見たことがあるとしたら・・・?」

と置きかえる感じなのだそうです。


次に、曲を3作品分作ります。

3曲を3週間で(!)作り、編曲やコーラスの収録も3曲分まとめてです。


そして、アニメーション作りです。

色を塗るときにお手伝いしてもらう以外は、井上さんが一人で作っているので、作品完成後の井上さんは、「鶴の恩返し」の機織り後のおつうさんみたいになってしまうそうです。


アニメーションは関連する過去の「日曜美術館」やさまざまな資料を参考に作られ、そこから「小ネタ」も生み出されるのだそうです。


例えば、「指揮者が手」では、

  • 高村光太郎の詩「梅酒」が心に沁みる素敵な詩だったので、「重なってテンダリー」という歌詞部分のアニメーションを梅酒の絵に
  • 「『手』といえば、『ハンドパワー』」との連想から、歌詞係の高村光太郎はハンドパワーで歌詞カードを持っている

などの「小ネタ」が散りばめられています。

質疑応答

講座参加者からの質問に、井上さんと倉森さんが答えてくださいました。

質問者一人一人に、好きなびじゅチューン!作品やその理由を聞いてくださり、「あぁ、その曲もいいよね~」と共感できるためか、とても良い雰囲気でした。


その中で、幻のびじゅチューン!作品について質問した方がおられました。

「あしゅらコーラス」、「ファッショニスタ大仏」、「最後の晩餐サンバ」が現在は放送されず、 DVDにも収録されていないのはなぜ?

「あしゅらコーラス」は興福寺の国宝・阿修羅像を、

「ファッショニスタ大仏」は東大寺の国宝・銅造盧舎那仏座像(奈良の大仏さま)を、

「最後の晩餐サンバ」はレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を、

モデルとしたびじゅチューン!初期の作品です。

「最後の晩餐サンバ」だけはびじゅチューン!公式ホームページで見られます。


阿修羅像も奈良の大仏さまも、国宝指定されている美術作品であるという認識で、かつ、 予め許可を得た上で「あしゅらコーラス」、「ファッショニスタ大仏」が作られました。

しかし、

「信仰の対象でもあるので、(びじゅチューン!を見た人が)傷つくことがあるかもしれない。」

とお寺側から話が有りました。

一人でも傷つく人が出てしまうのは、びじゅチューン!としての本意ではないため、DVD収録などをしなかったそうです。


この質問は、ご一家でびじゅチューン!ファンだという男性がしてくださいました。

お好きなびじゅチューン!作品は「最後の晩餐サンバ」だとおっしゃっていたので、初期からのびじゅチューン!ファンでいらっしゃるのだと思います。


わたしも知りたかったことなので、「よくぞ聞いてくださった!」と心の中で拍手を送っていました。


この講座で井上さんと倉森さんのお話を伺い、びじゅチューン!は、題材となった美術作品と作者への敬意や、「美術への入り口を広げたい」という信念に満ちた番組だということがよく分かりました。

その番組で作られた上記3作品が、また広く世に出ていくときが来るといいなと思います。

ちなみに、わたしも井上さんと倉森さんに「おねがい」を伝えられました

わたしが緊張で声を震わせながらした「おねがい」は、

「びじゅチューン!と日曜美術館のコラボ番組を作ってください」です。


2018年のお正月に、「美の壺」とのコラボ番組が放送されたので、次は、満を持して「日曜美術館」とのコラボ番組を放送していただけたら・・・、と思っています。

井上涼さんがびじゅチューン!作品を1曲歌ってくださいました!

会場からあがったリクエスト3作品は、

「厳島ライフセーバー」

「雪中のフォーメーション〈山〉」

「鳥獣戯画ジム」

でした。


参加者の拍手で投票して選ばれたのは、「鳥獣戯画ジム」でした。


井上さんは会場じゅうを周りながら歌ってくださり、参加者の幅広い年代を超えて、とっても盛り上がりました。

受講して、本当によかったです

プロデューサー・倉森京子さんの信念と情熱が、アーティスト・井上涼さんの才能と努力に出会って生み出されているのがびじゅチューン!なのだとわかりました。


実際にお話を伺うと、その方の持つ思いが言葉以外でも感じられます。


びじゅチューン!がお好きな方は、チャンスがあったら講座を受講してみてください。

その時には、「質問」と、「好きなびじゅチューン!作品」をあらかじめ考えておくのが おすすめです。


講座受講後に「鳥獣戯画ジム」を聞くと、今まで以上にテンションが上がるようになりました。