びじゅチューン!「オフィーリア、まだまだ」とは
びじゅチューン!は、NHK Eテレで放送されている5分間番組です。
古今東西の美術作品を、アーティスト・井上涼さんの作った歌とアニメーションで楽しく紹介してくれます。(びじゅチューン!の公式ホームページはこちら)
「オフィーリア、まだまだ」はびじゅチューン!の作品のひとつです。
ジョン・エヴァレット・ミレイが描いた「オフィーリア」という絵がモデルです。
劇作家・シェイクスピアによる悲劇「ハムレット」のヒロインの入水場面が描かれています。びじゅチューン!公式ホームページに行ったとき、「LADING・・・」の文字と共に背泳ぎしているのが「オフィーリア、まだまだ」の主人公・オフィーリアさんです。
(2019年4月にびじゅチューン!公式ホームページの仕様が変わり、オフィーリアさんも登場しなくなりました。)
「オフィーリア、まだまだ」のお話の内容
川で沈みかけているオフィーリアさんは、背泳ぎが得意だったことを思い出します。
「まだまだいける!」と背泳ぎでどんどん進んでいきます。
恋人から罵倒されたことも思い出すけど、泳ぎ続けるうちに新しい友達もでき、新しい世界が広がっていきます。
戯曲「ハムレット」を読んでみました
わたしは「びじゅチューン!DVD BOOK」で初めて、オフィーリアがシェイクスピアの戯曲「ハムレット」の登場人物であることを知りました。
「オフィーリア、まだまだ」のアニメーションで、緑色の顔になってオフィーリアさんを罵倒している恋人は、ハムレットだったんですね。
戯曲「ハムレット」、聞いたことはあるのですが、演劇も映画も見たことがなく、本も読んだことがありませんでした。
どのようなお話なのか、新潮文庫の「ハムレット」(ウィリアム・シェイクスピア 作/福田 恆存 訳)を読んでみました。
あらすじ
デンマーク国王が急死します。
国王の弟が王妃と結婚し、王の座につきます。
王子ハムレットの前に父の亡霊があらわれ、弟に毒殺されたと伝えます。
ハムレットは父の敵討ちのために狂気を装い、恋人のオフィーリアを「尼寺へ行け」などと罵倒します。
その後、王妃(=母)との会話を盗み聞きしていたオフィーリアの父親を、ハムレットは王と勘違いして刺し殺してしまいます。
オフィーリアは正気を失い、溺死してしまいます。
ハムレットを亡き者にしたい王によって、ハムレットとオフィーリアの兄との剣術試合が開かれます。
剣術試合の場で、王妃、オフィーリアの兄、王、ハムレットが次々に命を落とします。
登場人物関係図
ジョン・エヴァレット・ミレイが描いた「オフィーリア」の場面のときの登場人物関係図を、オフィーリアを中心に簡単なジェノグラムとエコマップを使ってあらわしてみました。
ジェノグラムは家族関係を、エコマップは家族・関係者との関わりを図にしたもので、福祉、医療、教育などの分野で使われます。

感想
さすがに、「悲劇」な結末でした。
1600年頃に書かれた戯曲ではありますが、素人のわたしが読むには、
- 亡くなったお父さんの敵討ちや苦しみを、ハムレットがひとりで抱え込むからこじれちゃうんじゃないの?
- 身近に生きている大切な人(恋人や母)を大切にできないハムレットって、リーダーには不向きなのでは?
- ハムレットは、お父さんの敵討ちでなければ、本当は何をして生きていきたかったの?
- オフィーリアは、お父さんやハムレットの言いなりになりすぎなのでは?
- オフィーリアが本当にしたかったことは、なに?
など、もやもやしました。
なんとも居心地の悪い読後感でした。
「オフィーリア、まだまだ」の歌詞係のなぞ
「オフィーリア、まだまだ」の歌詞係は、ムクドリです。
なぜムクドリなのか疑問に思っていたのですが、戯曲「ハムレット」にムクドリが出てきました。
オフィーリアが父親にハムレットとの関係を聞かれる場面で、ハムレットが自分に何度も愛を誓ってくれたと言います。
父親は、「そんな誓いなどムクドリをひっかける罠のようなもので、男の常套手段なのだから本気にするな」と身分違いの恋に調子に乗らないようオフィーリアに釘をさします。
父親に何を言われようと、オフィーリアはハムレットを想い続けますが…。
オフィーリアの背泳ぎの速さはどのくらい?
「オフィーリア、まだまだ」の中で、オフィーリアさんは背泳ぎで「自己記録100ノット」をマークします。
「100ノット」がどのくらいの速さなのか調べてみました。
Wikipediaによると、
1ノット = 時速1.852㎞
100ノット = 時速185.2㎞
とのことです。
つまり、オフィーリアさんの背泳ぎは、およそ時速185㎞! 速すぎる!!
おまけ
アニメーションでは、オフィーリアさんから花輪をプレゼントされたどじょうがタイムを計っています。
どじょうが持っているストップウォッチに、
- SUGOI HAYAI(すごい はやい)
- TOTTEMO HAYAI(とっても はやい)
- HONTO DESUKA(ほんと ですか)
- SUGOINE MANE DEKINAI(すごいね まね できない)
- TIME IS MONEY(=「時は金なり」)
と書かれているのも見どころのひとつです。
「オフィーリア、まだまだ」がもっと好きになりました
びじゅチューン!「オフィーリア、まだまだ」のモデルとなった美術作品も、その作品の元となった有名な古典・戯曲「ハムレット」の内容も知りませんでした。
でも、「オフィーリア、まだまだ」は
- 溺れる寸前のオフィーリアさんが背泳ぎをし出すという自由な発想
- どじょうや花たちなどのキャラクターがかわいい
- ストップウォッチに書かれた言葉がおもしろい
- 覚えやすい曲
など、好きなところがたくさんありました。
今回、初めて戯曲「ハムレット」を読んでみて、「オフィーリア、まだまだ」の好きなポイントが増えました。
それは、オフィーリアさんの表情です。
「まだまだ!」という決意を感じさせる眉毛や口元を見ると、応援したくなります。
恋人からの罵倒や別れ、お父さんとの別れも、ただ受け入れるだけのオフィーリアさんではありません。
自分はどうしたいのか考え、行動に移す勇気を出したからこその決意の表情なのだと思います。
「オフィーリア、まだまだ」は、戯曲「ハムレット」を読んで感じた、もやもやとした気持ち悪さを吹き飛ばしてくれました。

びじゅチューン!「オフィーリア、まだまだ」がなければ、戯曲「ハムレット」を読んでみることも、「ノット」という速さの単位について調べてみることもなかったと思います。
びじゅチューン!は、美術作品だけでなく、読書や数字にも興味を広げてくれる番組です。
「オフィーリア、まだまだ」はびじゅチューン!DVD BOOKに収録されています。