紙に開けた穴に糸を通して作る紙刺繍は、気軽に楽しめる手芸のひとつです。
好みの図案を自由に楽しめますので、わたしは子どもの着物の背中にお守りのように縫われていた「背守り」を紙刺繍にしてみました。
直線が中心の背守りモチーフは紙刺繍と相性がいいようです。
シンプルな背守りモチーフは紙刺繍にもってこい!
紙刺繍とは
画用紙やカードなどの紙に刺繍をするのが紙刺繍です。
図案に沿って目打ちなどで穴を開け、糸を通していきます。
布に刺繍するのと比べると複雑で細やかな表現は難しいですが、あらかじめ開けた穴に糸を通していくので作業自体は簡単です。
背守りとは
子供を魔物から守るためのしるしとして、日本で着物の背中に縫われてきたのが背守り(せまもり)です。
大人の着物は反物を縫い合わせてできる線が背の中心に一本走りますが、サイズの小さな子供の着物にはその縫い目がありません。
昔から魔物は背中から忍び込むと考えられてきました。
また、目は魔除けやお守りの力があり、その力は縫い目にも宿るとも考えられてきました。
大人の着物は背中心の縫い目が魔除けになりますが、背中に縫い目のない子供の着物は無防備なままです。
そこで、無事に育つようにと願いをこめて子供の着物に施された縫い目が背守りです。
わたしはもんきりあそびの本を多く出版されているエクスプランテさんの商品紹介で背守りの存在を知りました。
背守りは子の健やかな成長や幸せを願うモチーフですので、縁起のよいものばかりです。
直線で形作られているので、素朴な趣があります。
エクスプランテさんの本と共にわたしが参考にしたのは堀川波さんのこちらの著書です。
詳しい刺し方の解説やたくさんのシンプルでかわいい図案が載っているのでおすすめです。
どちらの本も紙への背守り刺繍が紹介されているので、紙刺繍にも挑戦しやすいです。
紙に背守りモチーフを刺繍してみると…
まずは画用紙に
画用紙と使い古しのふきんにそれぞれ同じモチーフを刺しました。
画用紙に刺すときは、図案の点に目打ちで穴を開け、そこに糸を通します。
ふきんに刺すときは、図案の点同士を糸の直線でつなぐように刺します。
基本的には返し縫い(バックステッチ)と玉どめ(フレンチナッツステッチ)だけで、難しい技法は使いません。
飛鶴(とびづる)と亀です。
こちらは、鱗車(八枚羽根)と蜻蛉(とんぼ)です。
ふきんは布地が薄く張りもないので、長めの直線だけで描くモチーフは特に糸が浮いてしまいます。
同じモチーフでも、画用紙に刺すと糸がピンと張るので直線がきれいに見えます。
和紙にも
少し慣れてきたところで、画用紙ではなく和紙に刺してみました。
画用紙はカードに仕立てられますが、もう少し薄手の紙に刺すことができればもっと使い道が増えるのではないかと思ったからです。
和紙は繊維が絡まり合っていて破れにくいので、薄手の紙刺繍用の紙として選びました。
蜻蛉(とんぼ)です。
こちらは、いったん和紙でポチ袋/八角たとう/六角たとうを折ってから開き、できあがりの位置を調整して紙刺繍したものです。
( → 折り紙で作るポチ袋については、過去記事「【折り紙で作るポチ袋いろいろ】お年玉やお小遣いに!普通サイズの折り紙でお金を包むのに最適なのは?」もご参照ください。)
左から、
・麻の葉
・紅白の梅と蝶
・飛鶴と亀
です。
画用紙と比べると糸の張り具合に気を遣いますが、薄手でも丈夫なので安心して刺せます。
和の文様を手軽に楽しめる背守りモチーフの紙刺繍
直線で描かれる背守りのモチーフは、長い直線がふにゃふにゃせずピシッとしているときれいです。
布地に刺繍しようとすると糸の張り具合を気にしながらの作業ですが、紙刺繍は紙のおかげで糸の張りを適度に保てるので仕上がりも決まりやすいです。
子を思う親心から生まれた背守りは、シンプルでわかりやすいデザインに温かみがこもっています。
背守りモチーフを紙刺繍してみると、和の文様がぐっと親しみやすく感じられますよ。