「運針」「折りぐけ」「本ぐけ」のしくみを知るとふだんの生活に役立ちます
和裁教室ではじめに教えていただいたのが、和裁の基本の縫い方となる「運針」「折りぐけ」「本ぐけ」でした。
「和裁」は「和服裁縫」を略した言葉です。
着物を着る機会がないと、和裁にそれほど興味が向かないかもしれませんが、3つの基本の縫い方が、ふだんの生活のちょっとしたところで役立ちます。
和裁で正しいとされる縫い方ができなくても、しくみを知っているだけでヒントになります。
実際の縫い方や姿勢はプロがアップされているYouTubeなどの動画をご覧になる方が良いです。
ここでは、「運針」「折りぐけ」「本ぐけ」をしたときの糸と布の関係と、ふだんの生活のどのような場面で役立つのかをご紹介します。
運針:瞑想の代わりにも
お裁縫の基本となる並縫いを、長く、まっすぐ、連続して縫う方法です。
わたしが趣味以外の場面で運針を使うことはあまりないです。
子どもが学校に持っていく雑巾を縫うときも、晒の布で運針の練習をするのとは勝手が違い、わたしの技術ではタオルに「運針」には至らず、ただの並縫いになります。
でも、運針はやっぱり基本中の基本です。
2017年9月25日(月)放送のNHK「あさイチ」の「特集 この秋おすすめ“ちょこっと手芸”」では、東京の豊島岡女子学園の生徒さんたちが毎朝5分、もくもくと運針する様子が紹介されていました。
運針や手芸などに集中すると、脳がリラックスしているのにやる気が満ちてくる状態になるそうです。
わたしは和裁教室に通い始めた2017年10月から、ほぼ毎朝、運針の練習をしています。
指ぬきの使い方や針の正しい持ち方も知らないところからのスタートだったので、始めは全くできませんでした。
2~3週間くらいで指が慣れてきた感じがありました。
今は、続けるのがいやにならないよう、1m分だけ運針の練習をしています。
10分ほどかかりますが、姿勢、布の振り方、縫い目などに気持ちが集中するので、気持ちの切り替えができてすっきりします。
フルタイム勤務時代に強いストレスを感じていた頃、毎日10分間の瞑想を試みたことがありました。
でも、雑念が次から次へと湧いてきたり、眠気との区別がつかなかったりして、瞑想になっているのかどうかもわからず、結局、続きませんでした。
運針は、運針をする自分の手の動きなど「今、この瞬間」に自然と集中できるので、瞑想が続かないという方は試してみる価値があると思います。
折りぐけ:ミシンなしの裾上げに
表にだけ少し縫い目が出る縫い方で、布の端を処理するときなどに使います。
できあがりで裏になる面を見て縫います。
できあがりで表になる面の布を少しすくったら、その対面となる部分に針を入れますが、裏には糸が出ないよう、三つ折りした布の間を通します。
ふだんの生活では、折りぐけを一番よく使います。
ミシンを持っていないわが家で子どものズボンのすそ上げをするには、この縫い方が最適だからです。
できあがりの表面だけ見ればまつり縫いでも良いのですが、折ぐけと比べると、裏面で糸が多く出てしまいます。
折ぐけは裏面で糸が布にかくれているので、脱ぎ履きのときに糸に足や指が引っかかりにくく、見た目もすっきりします。
本ぐけ:返し口を縫いとじるときに
表にも裏にも縫い目が出ない縫い方です。
布を折り込んで表面だけが見えるようにし、表面に糸が出ないように折り込んだ面同士を縫い合わせていきます。
「コの字縫い」のイメージです。
クッションカバー、コースター、マスコットなど、中表にして縫い合わせますが、返し口は縫わずにおきます。
返し口から全体を表に返してから、その部分を縫いとじますが、まつり縫いだとどうしても糸が表に見えてしまいます。
本ぐけなら表に糸が見えないので、できあがりがすっきりします。
運針だけでも小学校の家庭科で習えたらいいのに
「運針」「折りぐけ」「本ぐけ」は耳慣れない言葉です。
でも、実際にこれらの縫い方ができると、手縫いで作れるものの幅が広がります。
わたしが小学生の頃、学校でも家でも運針は教わりませんでした。
教材として買ってもらったお裁縫セットには指ぬきが付いていましたが、ずっと使い方がわからないままでした。
夫は祖母から運針を仕込まれたので指ぬきを使えるそうですが、珍しい方だと思います。
今の小学生はどうなんだろうと思い、娘のお裁縫セットを見てみたら指ぬきが付いていました。
でも、授業で指ぬきの使い方は習わなかったそうです。
せっかく標準セットに指ぬきが付いているなら、指ぬきを使う縫い方、せめて運針だけでも家庭科の授業で教えていただけたらいいなと思います。
日常生活にも役立ちますし、日本の文化に触れるきっかけのひとつにもなります。
運針ができる子ども達って、かっこいいと思います。