ジェノグラムとは
ジェノグラムは基本情報のひとつです
ジェノグラムは利用者さんを中心とした三世代以上の家系図です。
福祉、医療、教育などの分野で、利用者さんを理解するため、支援内容を記録したり振り返ったりするために使われています。
氏名・生年月日・連絡先などと並ぶ、基本情報のひとつです。
わたしも社会福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)の仕事の中で、何度もジェノグラムを書いてきました。
手書きでも良いけれど・・・
ジェノグラムをパソコンで作成できるソフトもありますが、職場に導入されていない場合も多いです。
パソコンソフトが導入されていたとしても、研修に提出する資料を作るときには使えないことがほとんどです。
ジェノグラムは手書きか、パソコンの描画ツールで書くしかない場面がたくさんあります。
手書きのジェノグラムでも良いのですが、データとして保存できた方が修正や共有が簡単です。
でも、パソコンでジェノグラムを書こうとすると、
「記号の大きさがそろわない!」
「線がずれる!」
「フリーハンドのような線を描くのが難しい!」
など、ちょっとしたストレスが積み重なりがちです。
ここでは必要最低限の情報のジェノグラムを、パソコンで書くための方法をご紹介します。
一気に仕上げる、というよりは、地道な作業です。
わたしのこれまでの仕事での試行錯誤の結果ですが、どなたかのお役に立てたらうれしいです。
パソコンでジェノグラムを書く方法
パソコンでジェノグラムを書くには、パソコンの表計算ソフト・エクセル(Excel)を使うのがおすすめです。
エクセルなら福祉関連の職場のパソコンに標準装備されていますし、描画ツールがあるからです。
基本の図形を準備する
エクセルを開いたら、ワークシートにジェノグラムで使う基本の図形を作っておきます。
「正方形(/正円/正三角形)にしたい」
「まっすぐに線を引きたい」
というときは、キーボードのShiftキーを押しながら作業します。
図形は、「塗りつぶし」や「枠線」の設定を使って調整します。
図形の枠線の太さをそろえておくと、加工したいときの目安になります。
ちなみに下記の作成例では、二重線の図は5ptで、それ以外は1ptで作りました。
ジェノグラムに使われる記号や線の例はいろいろありますが、わたしはエクセルでも作りやすいシンプルな記号や線を使っています。
どのような記号や線があるのか、厚生労働省のサイトもご覧になってみてください。
〈参考〉厚生労働省のサイトに載っているジェノグラムの作り方と対人関係マップの作り方
基本図形のコピーと貼り付けでジェノグラムを書く
基本図形をコピー → 貼り付け をくり返してジェノグラムを書いていきます。
エクセルのワークシートの罫線をめやすにすると、全体の形がまとまり、見やすい図を書くことができます。
「同居者を囲む線」は、こんなふうに整えています。
囲み線を右クリックして、「頂点の編集」を選びます。
線が赤色、「頂点」が■になりますので、■を動かして形を整えます。
書いた図はこまめにグループ化する
ここまでの作業では図形ひとつひとつを並べただけで、バラバラのままです。
「位置を移動させたい」、「コピーしたい」と思っても、記号や線がバラバラなので思うように作業できません。
そこで、並べた図形をまとまりにします。
shiftキーを押しながらひとつひとつの図形をクリックし、「グループ化」を選択します。
「グループ化」することで、ひとつの図としてまとまります。
簡単に図形の場所を移動したり、別の文書にコピー → 貼り付けをしたり、大きさを変えたりすることができます。
こまめにグループ化しておくと作業がスムーズです。
必要な大きさに調整する
できあがったジェノグラムは、全体がグループ化されていれば大きさの調整が簡単です。
図をコピーして、別の文書への貼り付けもできます。
文字や矢印などを足して、さらに分かりやすい図にすることもできます
基本のジェノグラムを作れれば、そこに文字で年齢や追加情報を加えたり、矢印で関係性を表したりしていくこともできます。
例えば、
これは、わたしが書いたシェイクスピアの戯曲「ハムレット」の登場人物相関図です。
「ハムレット」のあらすじを紹介するため、基本のジェノグラムに文字や矢印などの情報を追加してみました。
この時に使った図形は、全てエクセルにあったものです。
やみくもに情報を書き込んでも、見にくくわかりにくい図になってしまいます。
どの程度の情報を書き加えるのかは、ジェノグラムが必要な理由によって変わります。
事例検討などで自身の仕事を振り返るのであれば、ある程度詳しい情報が必要ですし、関係機関に伝える基本情報の一部であれば、シンプルなジェノグラムの方が共有しやすい場合もあります。
ジェノグラムを書く目的によって、書き込む情報の量は変わります。
エクセルでジェノグラムを描くための参考書は?
エクセル関係の本は、関数やデータをどう扱うかを詳細に解説しているものが多いです。
図に関する説明も表やグラフの作り方ばかりで、描画ツールの使い方を教えてくれる本にはなかなか出会えませんでした。
エクセルでジェノグラムを描くために参考になる本で、ようやく見つけたのがこちら ↓ です。
「今すぐ使えるかんたんEx Excel プロ技BESTセレクション」(井上香緒里 著・技術評論社)では、描画ツールの実践的な使い方がわかりやすく解説されています。
描画ツールの使い方だけでなく、関数の使い方やグラフの作り方など、もう少し効率的に仕事を片付けたいときや困ったときにすぐ役立つ技もたくさん載っていますよ。
仕事でのジェノグラム、日常でのジェノグラム
利用者さんに家族関係をお聞きするときは、ジェノグラムを書きながら
わたしが仕事で利用者さんから家族関係について教えていただくときは、白い紙を用意して、利用者さんにも見ていただきながらジェノグラムを書きます。
利用者さんも話しやすくなるのか、予想以上に多くの情報を得られるのでおすすめです。
利用者さんからいただいた情報をきちんとまとめておくことで、その後の仕事がスムーズになり、利用者さんへの提案の質も上がります。
自分の仕事を振り返るための手がかりにもなります。
ジェノグラムは、こんな時にも役立ちます
ジェノグラムは、福祉、医療、教育の分野の仕事だけでなく、
・自分のルーツ
・数多い親戚の関係
・入り組んだ人間関係
を理解するときにも役立ちます。
わたしは夫側の親戚のことを義母が教えてくれたとき、ジェノグラムを書きながら義母の話を聞いていました。
夫にそれを見せたら、
「へえ~、こういう関係だったんだ~。これだと分かりやすいね。」
と言っていました。
また、わたしの実家の親戚を含めた家族関係を説明するときも、ジェノグラムを書くと相手にわかってもらいやすいです。
便利なジェノグラム
ジェノグラムは、多くの情報を簡単な図で分かりやすく伝え、理解するために便利なツールです。
書き方や記号のルールにとらわれすぎず、情報の正確さ、伝わりやすさ、わかりやすさを考えながら活用していきたいですね。