ウィリアム・モリスという19世紀イギリスのデザイナーをご存じですか?
わたしは大好きなテレビ番組「びじゅチューン!」を通じ、モリスが「モダンデザインのと父」と称される人物で、代表作のひとつが「いちご泥棒」だと知りました。
びじゅチューン!作品の「いちご泥棒大脱走」はわが家で全員一致のお気に入り作品でもあり、いちご泥棒の生地で何か作りたいと思っていました。
「この生地で半幅帯を作ったらかわいいんじゃないかな?」
と思いつき、和裁教室の先生に相談してみました。
先生が教室での制作をご快諾くださり、2回のレッスンと宿題を経て、洋裁の生地であるいちご泥棒を使った半幅帯ができあがりました!
いちご泥棒で半幅帯
ウィリアム・モリス「いちご泥棒」とは
ウィリアム・モリス(1834~1896)は19世紀イギリスのデザイナーです。
デザイナーとしてのみならず、詩人、画家、実業家など多方面で活躍しました。
生活と芸術を一致させようというアーツ・アンド・クラフツ運動の主導者でもあります。
「いちご泥棒」はモリスが1883年にデザインした布地で、2羽のムクドリといちごがパターン化されています。
わたしは紺色が好きなので、ベースが紺色っぽいいちご泥棒を100㎝分(生地幅は110㎝です)買いました。
帯にするには厚みのある生地がいいだろうと思い、オックス生地を選びました。
家に届いた生地を広げてみると、豪華だけれどすっきりした印象のいちご泥棒から目が離せません。
更紗模様のようでもあり、いくら見ても見飽きない素敵なデザインです。
いちご泥棒が半幅帯になるまで
半幅帯の作り方の大まかな流れは、
①切る
②つなげる
③四角く縫う
④表に返して口を綴じる
です。
工程自体は至ってシンプルですし、特別な技術は使わずに作れます。
②・③の作業でミシンを使えば、さらに簡単に作れると思います。
①切る
シンプルな半幅帯作りの中で、一番気を遣い、そして、難しいのは生地を切る工程かもしれません。
わたしは和裁教室の先生にこの部分をお任せしましたが、柄合わせには細心の注意が必要です。
帯芯か接着芯を付けることも考えていましたが、
・オックス生地のいちご泥棒がしっかりした生地だった
・家で気軽に洗濯できるように
との理由で、今回は芯なしの仕立てです。
半幅帯の両面がいちご泥棒なのはにぎやかすぎるので、片面は無地で作ることにしました。
ブルーベースのいちご泥棒に合わせ、紺色の無地のコットン生地も100㎝分(生地幅約110㎝)を用意しました。
まずは生地の水通しです。
いちご泥棒と紺色無地の生地をそれぞれ洗濯機でいつもより時間をかけて洗い、アイロンをかけます。
2枚の生地を和裁教室の先生にお預けして、裁断とヘラ付け(=縫う部分の印付け)をお願いしました。
いちご泥棒と紺色無地から、
・タテ 約18.3㎝(=帯本体15.3㎝+縫い代1.5㎝×2)
・ヨコ 約110㎝(=生地幅)
の長方形を4本ずつ切り出します。
いちご泥棒には2種類の鳥のモチーフが描かれています。
どの部分をどの方向で使うかで、できあがりが全く異なります。
先生もずいぶん悩んでくださいました。
最終的にわたしの好みを踏まえ、羽がブルーの鳥のモチーフを横方向に連続させることにしました。
この帯で結ぶのは主にリボン返しと想定し、手持ちの半幅帯でリボン返しを結んだとき表になる部分を調べ、糸で印を付けておきました。
今回の半幅帯は手持ちのこちら ↑ の半幅帯とほぼ同じサイズで作ることにしました。
できあがった半幅帯を結んだときにはぎ合わせ部分が表に出ないようにするため、この糸印を目印にします。
いちご泥棒の生地にはさみを入れる前に先生が教えてくださったのですが、柄が完全にまっすぐではなく、中央にかけて緩くたわんでいるのだそうです。
そのたわみも踏まえ、できあがりの柄行を最優先し裁断してくださいました。
さすがはプロ!
②つなげる
洋裁用の生地を使うので、裁断した布をはぎ合わせて必要な長さにしなければなりません。
いちご泥棒の生地は、はぎ合わせ部分も柄がつながるように先生が印を付けてくださいました。
はぎ合わせ部分を本返し縫いで縫い合わせます。
縫い目は左右に割り、しっかりコテを当てて開きます。
3ヵ所はぎ合わせました。
紺色の無地の生地も、3ヵ所はぎ合わせました。
はぎ合わせ部分は、表から見るとこんな感じです。
③四角く縫う
いよいよ本体を形作ります。
布を中表に合わせます。
手持ちの帯に重ね、あらかじめつけておいた糸印を参考に、はぎ合わせ部分が帯を結んだとき表に出ないよう調整して二枚の布を合わせます。
余った部分はカットします。
待ち針で止めたら…、
ひたすら運針で四角く縫い合わせていきます。
はぎ合わせした部分は本返し縫いにしました。
糸を足す場合は、直前の縫い目の上に針1本分沿わせるようにして縫いはじめます。
表に返すときの返し口を残して、ただただ運針しました。
この工程は家で宿題として縫ったのですが、約5時間かかりました。
④表に返して口を綴じる
いきなり表に返す前に、縫い目にキセをかけます。
キセをかけるとは、縫い目の少し外側を折ることで縫い目が直接表に出ないようにする和裁の技法です。
こんな風に、縫い目よりわずかに外側を折り、折った部分をコテで熱を加えながらしっかり押さえていきます。
表に返すときに形が崩れないよう、四隅は糸でかがっておきます。
返し口から腕を差し込んで全体を表に返したら、針を使って四隅の角をきれいに整えます。
いちご泥棒の面と紺無地の面の折り山が合うようにコテで押さえます。
全体が表に返ったら、返し口を綴じます。
返し口を内側に折り、本ぐけで縫い合わせます。
本ぐけは、表側にも裏側にも縫い目の出ない縫い方です。(→過去記事「【和裁の基本技3つ】着物じゃなくても役立ちます」)
仕上げは、紺無地の側に霧吹きをした当て布をし、縫った部分を中心にアイロンをかけて蒸気を飛ばしました。
完成です!
できあがりは、幅約15㎝、長さ約400㎝になりました。
いちご泥棒の半幅帯、綿100%でお気に入りです!
半幅帯は手縫いでも作れますが、ミシンを使える方ならもっと手早く仕上げられるでしょうから、自分好みの帯をいろいろ試してみるのも楽しいと思います。
完成した半幅帯をデニム着物に合わせてみました。
生地の重みで帯の結び目が下がってしまうため、帯揚げで補いました。
芯なしで仕立てましたが、特に問題ありません。
いちご泥棒は更紗のような柄なので他の着物にも合わせやすそうです。
着物に関するものは、お手入れが楽で自分の好きな色柄のものをそろえたいと思っています。
今回作ったいちご泥棒の半幅帯は、好きな色と憧れていた柄でお気に入りのひとつになりました。
和裁教室の先生や他の生徒さんも「すごくいいじゃない!」と褒めてくださいました。
表も裏もオックス生地を使った綿100%の帯なので、気軽にどんどん活用していきたいです。
ちなみに、わたしにいちご泥棒を教えてくれたびじゅチューン!「いちご泥棒大脱走」はびじゅチューン!DVD BOOK5(小学館)に収録されています。
表紙のカバーを外しても楽しめる、かわいい仕掛けが隠されているんですよ。